双六工場日誌

平凡な日常を淡々と綴ります。

サーバ擬人化ユーザ会としての活動停止とVRでの新しい活動について

サーバ擬人化ユーザ会は、ここしばらく活動が低迷していましたが、改めて考えなおした結果、現時点ではその役割を終えたと判断し、サーバ擬人化ユーザ会としての活動は停止して、新しい可能性を探す方へと舵を切ることにしました。

サーバ擬人化ユーザ会は、今回の冬コミでは「胡椒少々塩少佐ークル(仮)」として4日目(12月31日)に南ナ39aにてサークル参加していますが、今後当面はVRメインのサークルとして活動していくつもりです。

私は真面目に何かを書こうとすると、非常に理屈っぽく難解な文章になってしまいがちなので、本当はこれまでのサークル活動のような別の表現方法が取れればいいのですが、今回は文章でご容赦ください。

サーバ擬人化ユーザ会の活動停止について

まずは活動停止の経緯をざっくりと説明したいと思います。

サーバ擬人化ユーザ会は、2011年から時代の斜め先を行く「擬人化ユーザインターフェース(GUI)」の普及を目指して活動を開始し、ざびたん(Zabbixの擬人化)、インフラエンジニア双六に代表されるインフラエンジニア向けのボードゲームを作成してきました。

それまでのインフラエンジニアとITシステムの関係は、殺伐としたものでした。システム障害の時には、障害が起きたという事実だけが告げられ、それを復旧させたとしてもそれが当然のことのように誰からの感謝の言葉もありませんでした。(ただ、インフラエンジニアがサーバに名前を付けて愛着を持って見守る文化はありました。)

その現状に対して、私たちはインフラエンジニアとITの新たな可能性を模索し、まずはインフラエンジニアのために、システム障害の時には「アラートではなく応援を」、「システムを復旧させたらねぎらいの言葉を」というスローガンとして「ざびたん」を発表しました。単にシステムの情報を投げるだけではなくて、それを人の行動を勇気づけるものへと昇華させ表現するプロトタイプです。

www.slideshare.net

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ただ、その時の私もさすがにITシステムの主流がこの方向で来るとは思っていませんでした。複雑化したシステムは、アプリケーションコードとして管理され、できるだけ意図を組んだ自然言語の形で表現されるようになるべきということ自体は、ネタではなく、それなりに考えた結論ではあったのですが。

しかし、なんとこの10年の間に、私たちが考えた以上に世界の主流は擬人化ユーザインターフェースとなりました。

システムの運用方式では数年前からChat Opsが登場し、そこでは、障害通知もシステムとの対話を促すメッセージの一つとなり、システムと話すように障害の対応からアプリケーションのデプロイなどなどがエンジニア同士がチャットをしているシステムの中でチャットボットとの対話で行われます。

また、ITインフラはそれ自体が抽象化されて実際物理的な実装が隠蔽されたうえで、アプリケーションの一つとして運用されるようになり、インフラエンジニアはSRE(Site Reliability Engineer)と形を変え、インフラは固定的なものではなく、常に変化しつづけ、一定の障害が起こることを折り込み済みで運用されるプログラマブルなレイヤの一つとなり、日常的に触れるインターフェースはより高高次となりました。

よりユーザーフレンドリーなインターフェースが求められるコンシューマーレベルでは、AI技術の発展により、Siri、Google Home、Alexaなど、システムに疑似的な人格が与えられ、自然言語による対話で操作できるようになってきています。

おそらくもうこの流れは変わらないでしょう。今後、さらに研究が進み、より洗練された擬人化ユーザインターフェース(今世間でいうところの「AI」)が発展してくると思われます。

このように斜め先を走っていたつもりが、現実の方が思った以上にこちら側に近づいてきたため、もはやサーバ擬人化ユーザ会として何かネタをやっても、虚構新聞のネタが現実になってしまうような形になるのは否定できません。(たとえば、今新しくざびたんを見た人にとっては、Chat OpsAIスピーカーの劣化版みたいにしか見えないと思います)

そのため、活動をあまり行わなくなってからしばらく経ちましたが、次にやれそうなことも見つけたので明示的に活動停止することにしました。

今後の活動について

今後の活動ですが、唐突に思うかもしれませんが、結論としてはVRが中心になります。

そもそも今回「胡椒少々塩少佐ークル(仮)」で出したのは、サーバ擬人化ユーザ会としてやれることを思いつかなかったためのその場の思い付きに過ぎなかったのですが、実際やってみると私たちの活動のうち、まだやり残していることはVRに向いていそうだと思うのと、端的に私自身がVR沼にハマってしまったと認めざるを得ないからです。

サーバ擬人化ユーザ会のもう一本の活動の軸は、これもあまり明示的には言ってきませんでしたが、インフラエンジニアとしての体験の共有、コミュニケーションの促進でした。その考えのもとに製作してきたのが、インフラエンジニア双六をはじめとするインフラエンジニアゲームシリーズです。

これは自分自身のゲームに対するスタンスなのですが、私は「ゲームはコミュニケーションツール」と考え、その考えのもとゲームをしたり作ったりしてきました。

コミュニケーションが苦手な人にとってはゲームは、決められたルールのもと安心して相手とコミュニケーションをとれる場になります。また、ゲームの中にシナリオを織り込むことで、ただ話を聞いただけではわからない疑似体験をゲーム上で行うことができます。(インフラエンジニア双六は、TRPG的な会話が参加した人の実体験に基づいて行われることを意図したマスの配置になっていましたし、インフラエンジニアの野望は元ネタを知っている世代が次の世代に歴史を語ってくれることを期待したり、元ネタを知らない人が興味を持って調べてくれることを意図したりしていました)

ゲームをする時間が無駄というようなことをいう人がいますが、私自身はゲームを楽しむこと、つまりコミュニケーションを楽しむことが人生の究極の目的だと思っています。

そして、それをゲームの作りに全力で組み込んだことが、一見出オチのネタゲームに見える私たちのゲームが実際に多くの人の遊んでもらえた理由だと考えています。

また、私たちが活発にゲームを作っていた時期は、IT勉強会が広がっていく途中で、また、技術者による同人活動も一部のコミュニティに限られていて、潜在的にはニッチな技術書のニーズがあるにもかかわらず、多くの人が同人誌をオタクの一部の趣味だと認識して手をつけていない状態でした。

今や技術系同人誌が数百部売れるのは普通になりましたが、それまでは技術系同人誌は一部のマニア向けで身内にしか売れないというのが常識だったと思います。

しかし、今は技術書同人を出すのが普通の文化として受け入れられるようになって、技術書典のような企業が背景となる技術書専門のイベントまで開かれ、超満員になるようになりました。そんな中で、私自身は同人誌・同人ゲームとして斜め先の何を出せるのかが見えなくなっていました。

そういう中、最近VR(特にVRChat)に触れ、自分がゲームで表現したかったコミュニケーションツールや体験の共有をより高いレベルで実現できる可能性を感じるようになりました。

まだ私自身可能性の範囲が判断できていないため、何ができるのか具体的にできていませんが、私のゲームに対するスタンスを表現する場としてVRを活用していきたいと思っています。

私自身は、言葉で語ること自体は得意ではなく、そうするとどうしても理屈っぽくなってしまうので、これから先は作ったものや行動で伝えていければと思ってます。

また、時代の斜め先を開拓して、そっちに世界を引き込むようにしていきたいと思うので、今後もよろしくお願いできればと思います。